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2019年度PGS開催報告(令和元年8月18日)

学術だより

顎口腔系を中心とした解剖学的正常咬合

瀬田祐司先生/片岡真司先生

 

  令元年8月18日(日)九州歯科大学にて、今年度第二回目のポストグラディエートセミナーが開催されました。午前は九州歯科大学歯学部歯学科健康増進学講座解剖学分野の瀬田祐司先生と片岡真司先生による講義が行われました。

前半は、瀬田先生による総合咀嚼器官の進化についてお話しいただきました。「解剖学的正常咬合」とは、総合咀嚼器官が健全に成長・発育し、顎関節の形態と位置が正常な関係を保持しながら、歯および歯列弓が正常に配列し、規則的な咬合曲線を形成して、形態的にも機能的にも正常であるような咬合関係であり、総合咀嚼器官としての口腔は、歯・歯列・骨・顎関節・神経-筋反射機構およびその他の軟組織から構成されており、歯列が有効に機能するためには、周囲の各器官の発生学的形態形成順序と機関相互間の協調関係が深く関わることから、顎・口腔の進化についてご説明いただきました。

顎関節の進化の過程で、多くの骨によって構成されていた爬虫網の下顎骨から、哺乳網では歯骨のみとなり、それにより現在の顎関節は第2次顎関節として咀嚼機能を有することになったとのことでした。歯の機能も捕食器官から咀嚼器としての消化機能を有し、頭蓋下顎筋のみだった爬虫網の咀嚼筋から側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋に分化し、複雑な咀嚼運動が可能になっているとのことです。また、肉食性動物の顎運動は蝶番運動が主となり、臼歯列は切断機能が発達した歯より構成されるのに対して、草食性動物の顎運動は側方または前方運動が主であり、臼歯列は臼摩機能を発達した歯に分化しているなど食性環境に適した形態になり、ヒトは肉食性と草食性動物の中間形の特徴を有する形態になっていることを進化の過程を通じてお話しいただきました。講義の中で「形態は機能に反映する」ということを言われており、臨床においてとても大事なことだと感じました。

後半は、片岡先生より顎関節、咀嚼筋、開口筋の解剖とそれらによる顎運動や筋膜について詳しく講義していただきました。蝶番運動や滑走運動が組み合わさって動く顎関節運動とそれに関係する咀嚼筋・開口筋の動きを整理することができ、非常に有意義な時間となりました。

また、2016年に治療が保険適用された咀嚼筋腱・腱膜過形成症などの紹介もしていただき、筋膜に対するアプローチという臨床のヒントもいただき、歯科治療において発生学的、解剖学的知識の大切さを改めて認識することができました。        

久保田潤平

実践 咬合再構成を極める

~歯列不正、歯周疾患、多数歯欠損を読み解く~

上田秀朗先生

 令和元年8月18日(日)九州歯科大学にて、今年度第二回目のポストグラディエートセミナーが開催されました。午後からは北九州市ご開業の上田秀朗先生のご講演が行われました。上田先生は南カリフォルニア大学客員教授や福岡歯科大学総合歯科学の臨床教授を兼任されており大変幅広くご活躍されている先生です。

今回の講演ではその豊富な知識、臨床経験からたくさんの症例を通して特にインプラントを用いた咬合の再構成の考え方をお話しくださいました。まず大切なことは「顎口腔系が破壊された原因の診査・診断ができているか?」ということであり、治療計画を立てる前になぜ咬合の再構築が必要となったかを考えることの重要性を説かれました。

咬合治療においてインプラントは効果的であるが、その利点と欠点をよく考えてリスクファクターを見逃さないようにすることの大切さ、インプラントの使用目的を明確にし、症例に応じて欠損補綴の種類を複合して使用することが大事であるとお話しされました。

咬合の再構成で大切なことはいかに歯列と咬合平面を整えるかということですが、多数歯欠損症例では顎関節に力が加わり変形している場合や咬合高径の低下に伴い下顎前歯の突き上げが起こり、上顎前歯の歯周疾患が進行していくことなどがあるため、顎関節の状態や歯周組織の状態を整えなければ咬合が安定しないということを実際の症例を通してみせていただきました。

印象深かったのが、顎口腔系に悪影響を及ぼす非機能的な運動であるパラファンクションにより再構成した咬合が破壊されていった症例でした。咬合の再構成を適切に行ってもパラファンクションが残存することで再度破壊されてしまうということであり、それを除去するための認知行動療法などの大切さなどについてもまざまざと認識させられました。

また、多くの症例を通して言われ続けていたことが、「メインテナンスが最も大切」ということであり、Craniofacial Growthという考え方をおしえていただきました。生体は常に変化しているため、治療を完了してもそれに変化に合わせてメインテナンスを継続していくことが非常に大切ということです。

「顎口腔系が破壊された原因」を全人的に考えながら臨床に向き合い、単一の手法にこだわらず患者の個性に合わせて複合的に考えて治療方法を選択するということの大切さを学ばせていただきました。

久保田潤平