九州歯科大学同窓会

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令和元年7月7日P.G.S.内藤真理子講師、加藤大明講師

学術

齲蝕予防の現在と未来:エビデンスを評価する

内藤真理子先生

  令元年7月7日九州歯科大学にて、今年度第一回目のポストグラディエートセミナーが開催されました。50名ほどの受講者があり活気に満ちたセミナーとなりました。

午前は広島大学大学院医歯薬保健学研究科口腔保健疫学の教授である内藤真理子先生による講義が行われました。講義内容は主に①医療、健康情報の利活用②エビデンスとナラティブ③診療ガイドラインと作成方法④齲蝕予防、治療に関するエビデンスといった内容でした。

情報化社会において二次情報の利活用は重要性を増しているとのことです。エビデンスの収集から評価に至るまでの各ステップの説明や日常臨床へ役立てる方法についてのお話がありました。

医療、健康の情報にはエビデンスとナラティブの2種類があります。エビデンスとは科学的妥当性が高い情報であり、ナラティブとは患者の語り体験の闘病記などからなります。エビデンスの情報の収集のためのサイト(文献データベースのサイトであるパブメド、ICHUSHI、コクラン)やナラティブの情報のサイトを紹介してくださいました。エビデンスを評価するためには臨床疫学的な方法論を理解する必要があります。エビデンスの蓄積とその利活用が医療の気質並びに発展につながっていきますとのことです。また診療ガイドラインとは、エビデンスなどに基づいて最適と思われる治療法を提示する文書のことで、患者と医療者が治療法を意思決定する際の重要な判断材料となるとのことです。Mindsにはいろんなガイドラインが掲載されておりぜひアクセスしてみたらどうですかとおっしゃっていました。

私たち一般開業医にとって日常臨床で疑問に思う点がよくあります。内藤先生が例に挙げられた、カリエス予防にはキシリトールが良いのか、フッ素入り歯磨剤が良いのか?また切削すべきなのはどの程度に進行した齲蝕なのか?こういったこともシステマティックレビューを活用したり、ガイドラインを調べることによって正確な情報を診療に生かし自信を持って患者様に勧めることができるなあと思いました。多くの情報があふれる中、どの情報を選ぶべきかその情報が果たして重要なのかいつも判断が難しく迷うことが多いですが、本日の講義を受けてこういった二次情報の利活用の仕方を知ることができました。これからの診療の新しい世界が開けた思いでした。         

荒嶽朋子

「歯を守る」時代の診療所づくり

~スウェーデン型歯科医院に変わるために大切なこと~

加藤大明先生

 令和元年7月7日(日)九州歯科大学にて、今年度第一回目のポストグラディエートセミナーが開催されました。午後からは福岡市ご開業の加藤大明先生のご講演が行われました。加藤先生は熊谷崇先生(日吉歯科診療所、山形県)に従事され、現在では予防の先進国であるスウェーデン、北欧にならった診療所づくりをされています。

今回の講演ではその基本的な考え方知識、手法等についてお話しくださいました。歯科診療は抜くしかなかった時代から修復の時代へと変遷してきました。しかしリピートレストレーションサイクルに陥って最終的には歯の喪失へとつながります。1970年代からスウェーデンでは修復をすることに無駄を感じ始め予防政策に切り替えてきたとのことです。これからの歯科医療はマイハイジニストによるメインテナンスを目的に定期的に通院すると言う形になってくるであろうとおっしゃっていました。事実スウェーデンでは40%の歯科衛生士はプライベートオフィスを持ち、患者はメインテナンスに通い、何かあればドクターに紹介を受けるといった形になっているとのことです。

メインテナンス方法は3ヶ月から半年に1回行い、磨けていない場所を歯科医院で教わり、磨き方を習い練習する、そして磨けていないところの汚れをとってもらうといった内容になっているとのことです。定期的なクリーニングのみでは歯の健康は守れない、適切な口腔衛生指導(教育、動機づけ)があって初めて歯が守れると言う事実については、すでに明確な結論が出ているとのことです。患者自身のプラークコントロールが非常に大切で、患者のモチベーションを上げるために歯科衛生士は教育者でなければならないとおっしゃっていました。また加藤先生は虫歯予防にはフッ素入り歯磨剤が何よりも大切だとおっしゃっています。この事は齲蝕予防方法の効果の比較を行ったシステマティックレビューにより評価されているそうです。フッ素の量は高い方が効果的であり、また日常的にフッ素入り歯磨剤を効果的に使ってあげることが大切だとのことです。

加藤先生のお話はエビデンスに基づいた内容で非常に納得のいくものでした。修復によるリピートレストレーションサイクルに陥らずに、一生自分の歯で食べていくためにも予防がいかに大切かということがよくわかりました。

「予防の知識を得るのは簡単だが、難しいのはその知識を診療に生かすこと」と熊谷先生がかつて学生講義でお話しされたそうです。「予防の質」を高めるためにも本日習った内容を医院のスタッフと共有し、診療にぜひ生かしていきたいと強く思いました。

                         荒嶽朋子